News

News

2019.12.19

EAST MEETS WEST 2019 Report

この投稿をシェアする

2019年4月26日(金)〜28(日) に東京国際フォーラム ホールCにて開催した音楽フェスティバル、『SRP Presents EAST MEETS WEST 2019』。時代を築いた大御所から、これから世界を目指す気鋭の若手といった、日米の豪華ミュージシャンたちが1つのステージに集まり共演。様々なアーティストとの「セッション」に注目した新たな音楽フェスティバルが実現した3日間となった。

     

<ウィル・リー  [Music Director・elb]>

 「“EAST MEETS WEST ”は僕の夢だった。そして、本当に夢がかなったよ!」

この気の遠くなるような大プロジェクトを全面的に統率したウィル・リーが軽快な身のこなしを見せつつ、そう笑顔でMCをする。

    

◆各日10時間ものリハーサルを重ねる  

国籍や文化を超えて東洋と西洋の音楽家たちによる実のある邂逅を求めた3日間全4公演の出演者を選び、演目やアレンジを決めたミュージック・ディレクターは本当に誇らしげ。実は出演者たちには早い段階でウィルから詳細な譜面が送られ、直前の3日間は毎日10時間ものリハーサルを重ねたという。華々しい各3時間にわたる本番の奥には、度を越したミュージック・ラヴァーの熱意と創意が横たわっていたのだ。

    

◆ステージを支える豪華 “スーパーバンド”

ウィルがまずこだわったのは、ハウス・バンド。それも、日米混在の編成を持つ。ジェフ・ヤング桑原あいという二人のキーボード/ピアノ奏者、ウィル・リー(エレクトリック)と鳥越啓介(アコースティック)という二人のベーシスト、そしてドラマーは大御所クリス・パーカーと20代半ばの山田玲というお二人。さらにサックス奏者のアーロン・ヘイクやトロンボーン奏者の村田陽一、トランぺッターの西村浩二といった管楽器奏者や3人の女性コーラス隊(うち一人はザ・ブラン・ニュー・ヘヴィーズの黄金期にフロントに立っていたエンディア・ダヴェンポートだ!)や、様々なスタイルをこなすギタリストのニア・フェルダー……。まさに、日米敏腕奏者たちの十字路。面々による伴奏はいろいろな個性を持つ主役たちを自在に乗せ、“魔法の絨毯”と称するにふさわしい。

(写真左上からウィル、クリス、ジェフ、アーロン、ニア。左下から村田、西村、鳥越、山田、桑原)

     

◆音楽ジャンルを飛び越えたゲストアーティスト陣 ​

<マイク・スターン(g)/渡辺香津美(g)>

そんなバンドにフィーチャーされる初日最初の出演者は、まさしく“永遠のギター小僧”を地でいくマイルス・デイヴィス・バンド出身のマイク・スターン。彼は颯爽と今のコンテンポラリー・ジャズの肝を表出した。一方、日本代表のギタリストとなる渡辺香津美はかつてTVCFにも用いられた名曲「ユニコーン」他を新編曲のもと観客に問い、彼はマイク・スターンのステージにも飛び入りして日米2大ギタリストの共演を実現させた。

(写真左からマイク、渡辺)

   

<ランディ・ブレッカー [tp]/アダ・ロヴァッティ [sax]>

ジャズ/フュージョン勢ではトランペッターのランディ・ブレッカーとテナー・サックス奏者のアダ・ロヴァッティ夫妻の演奏も受け手を沸かせた。実はマイアミ住だったウィルがNYで活動するきっかけを作った恩人がランディであり、ランディと弟の故マイケルが1970年代中期に結成したザ・ブレッカー・ブラザースにはウィルやドラマーのクリス・パーカーも参加。「サム・スカンク・ファンク」ほかザ・ブレッカー・ブラザースの曲を中心に紐解いた彼らのセットは、まさにエヴァーグリーンな表現の書き換えの面白さを教えた。

(写真左からランディ、アダ)

    

<日野皓正 [tp]/矢野顕子 [vo.pf]>

それから、トランペッターの日野皓正とシンガー/ピアニストの矢野顕子という日米を股にかけたワールド・クラスの出演者の参加もまたEAST MEETS WEST 2019の趣旨に合致する。代えのない秀でた音楽性とともに、二人のウィットとサーヴィス精神にあふれた振る舞いもまた超一流。こんなに大きな編成のもと開かれる矢野顕子表現は貴重であったし、日野皓正は意気盛んにランディ・ブレッカーの出番にも飛び入りをした。

(写真左から日野、矢野)

    

<藤巻亮太 [vo.g]/臼井ミトン [vo.g.key]>   

一方、藤巻亮太臼井ミトンというウィルのお眼鏡にかなった日本人シンガー・ソングライターもそれぞれに登場。洋楽センスを見事にJ-POP表現に昇華させる藤巻、R&B他アーシーな米国音楽語彙を巧みに日本語曲に転化させた臼井はともに、東西演奏陣のサポートのもと自らの持ち味を鋭意表出。今回、ウィルは耳のこえた日本のリスナーに才ある同胞を紹介したいという意図も持っていた。

(写真左から藤巻、臼井)

    

<桑原あい [pf]>

また、ハウス・バンドの一員をこなすとともに、個人アーティストとして表に立ち確かな手腕をアピールしたのが、ウィルとスティーヴ・ガッドとのトリオでレコーディングやツアーもしている伸び盛りピアニストの桑原あい。クインシー・ジョーンズからも高評を受ける彼女だが、これからより海外に出る存在であるのを、その好演は伝えるものだった。

    

ソウル・レジェンド “サム・ムーア” の熱唱  

そして、初日と最終日の公演の大トリを飾ったのが、レジェンダリーなソウル歌手であるサム・ムーアだ。1935年生まれである彼は椅子に座って歌ったが、ソウルの魅力を直裁に伝えるハリのある歌声は訴求力抜群。彼を世界的な存在としたサム&デイヴ時代の「ホールド・オン」や「ソウル・マン」を含む熱唱は聴衆の心を見事に射抜いた。実は彼、腰を痛めており今回のオファーを断っていたが、ウィルの熱意にほだされ出演を決めたという。最後のジョン・レノン曲「イマジン」を歌い終えると、観客はスタンディング・オヴェイション。まさしく“ソウル大使”たる彼の実演は、EAST MEETS WEST2019のハイライトだった 。

    

◆ラストを飾るのは有名なジャズ・ナンバー「フリーダム・ジャズ・ダンス」!

各公演の最後は出演者たち全員による軽快な音楽で有名なジャズナンバー「フリーダム・ジャズ・ダンス」をソロを回しながら演奏。それこそ海を挟んだ音楽家演奏者たちによる“プレイ・グラウンド”の具現ではなかったか。EAST MEETS WEST2019 は文字通り東西の音楽家たちの融合の可能性や興味深を示すだけでなく、ジャズからソウルやJ-POPまでを横断するリベラルな音楽享受の素敵さや異なる世代が繋がることの重要性を浮き彫りにしていたのは疑いがない。

また、名手たちが思うまま重なり合うライヴ・ミュージックの醍醐味が鮮やかに提示されてもいたはずだ。秀でた音楽観や豊かな人間性のもと、それらを成就させたウィルの頭のなかには、きっと次回への様々な展望が芽生えているに違いない。

    

(文:佐藤英輔/写真:RyoHiguchi)